金買取相場比較

コラム

金を売って税金がかかるのは、売った額ではなくもうけです

金を売ろうとして税金を調べると、30万円・50万円・200万円という数字が出てきます。 この3つは別々のことを指していて、どれも「これを超えたら税金がかかる」という線ではありません。 何がどの数字なのかを、所得税法とその施行令、国税庁のタックスアンサーの原文で確かめました。

先に結論だけ書くと、課税の対象になるのは売って受け取った金額ではなく、買ったときより高く売れたぶんです。 買った値段を覚えていない昔の品でも、考え方は変わりません。

条文まではいらない、要点だけ知りたいという場合は 金・貴金属を売ったときの税金に、同じ内容をやさしくまとめています。

ふだん使っていた品は、そもそも課税されない場合がある

所得税法は、生活に使っている動産を売ったときの所得には課税しないと定めています。

「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得」

「政令で定めるもの」の中身は、施行令のほうに書かれています。 読み方が少しひねられていて、30万円を超えるものを「以外のもの」から外すという形になっています。

「法第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。」

その「次に掲げるもの」の一つめが、貴金属です。

「貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品」

国税庁の説明では、同じことがこう書かれています。

「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。」

「ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。」

つまり1個または1組で30万円円を超えなければ、 生活に使っていた品を売った所得は課税されません。 指輪やネックレスを1点売る、という多くの場合はここに収まります。 30万円円は、田中貴金属が2026年10月2日に公表した 1gあたり23,034円で換算すると、純金で約13gにあたります。

ただし前提として、条文は「生活の用に供する」資産と書いています。 値上がりを見込んで買ったインゴットは、身につけていた指輪とは扱いが違います。 手元の品がどちらなのかは書類や経緯で決まるので、迷う場合は税務署か税理士に確認してください。

地金は、金額に関係なく譲渡所得になる

「金地金を売ったときの所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。」

「総合課税」とは、給与などほかの所得と合算してから税率をかけるという意味です。 株式の売却益のように、そこだけ切り離して一定の税率で終わる形ではありません。 そのため、同じ利益でも人によって税額が変わります。

計算の出発点は、売った額から買った額を引いたもの

国税庁の計算式はこうです。

「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=金地金の譲渡益」

ここからさらに、50万円円が引かれます。

「{[金地金の譲渡益]+[その年の金地金以外の総合課税の譲渡益]}-譲渡所得の特別控除50万円=課税される譲渡所得の金額」

「譲渡所得の特別控除の額は、その年の金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して50万円です。これらの譲渡益の合計額が50万円以下のときはその金額までしか控除できません。」

この50万円は、条文では次のように置かれています。

「前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。」

50万円円は売った額ではなく、もうけから引く額です。 100万円で売れたとしても、買ったのが80万円なら、もうけは20万円。 特別控除の50万円円に届かないので、 その年にほかの総合課税の譲渡益が無ければ課税される譲渡所得は出ません (売るためにかかった費用も引けます)。

注意したいのは、控除がその年の合計に対して1回だけという点です。 引用した注のとおり、金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益を合わせて50万円円が限度になります。 何回かに分けて売っても、売るたびに50万円円引けるわけではありません。

5年を超えて持っていた場合は、半分になる

所有していた期間が5年を超えると長期譲渡所得になり、課税される額が半分になります。

「(譲渡所得の金額)× 1/2 = 課税される譲渡所得の金額」

長期と短期の分かれ目は、買った日から売った日までの期間です。 詳しい区分は国税庁の No.3152「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」にまとまっています。

相続や贈与で受け取った品は、自分が受け取った日から数えるのではありません。 条文は、前の持ち主が持っていた期間を引き継ぐと定めています。

「居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。」

親から受け継いだ指輪を翌年に売った場合でも、親が5年を超えて持っていたなら長期として計算します。 受け取った日だけを見て短期と決めつけないでください (限定承認による相続など、この扱いから外れる場合が条文に挙げられています)。

200万円は、税金の線ではなく「税務署に知らせがいく」線

よく見かける200万円は、所得税法の別の条文から来ています。まず、売った側に告知の義務があります。

「金若しくは白金の地金又は金貨若しくは白金貨(以下この条において「金地金等」という。)の譲渡をした者」

「その金地金等の譲渡の対価(その額が政令で定める金額以下のものを除く。)の支払を受けるものは、政令で定めるところにより、その支払を受けるべき時までに、その者の氏名又は名称、住所」

「その金地金等の譲渡を受けた者(金地金等の売買を業として行う者に限る。以下この条において「支払者」という。)に告知しなければならない。」

「政令で定める金額以下のものを除く」の金額が、施行令に置かれています。

「法第二百二十四条の六(金地金等の譲渡の対価の受領者の告知)に規定する政令で定める金額は、二百万円とする。」

そしてこの対価を支払った業者が、税務署に調書を出します。

「居住者又は恒久的施設を有する非居住者に対し国内において前条に規定する金地金等の譲渡の対価の支払をする同条に規定する支払者」

200万円円を超えると税金がかかる、という意味ではありません。 かかるかどうかは前の章までの計算で決まり、ここで変わるのは税務署がその取引を把握するかどうかだけです。 逆に200万円円以下なら申告しなくてよい、ということでもありません。 200万円円は、田中貴金属の2026年10月2日時点の価格で 純金約87gぶんです。

もう一つ、条文が対象にしているのは「金若しくは白金の地金又は金貨若しくは白金貨」です。 K18のネックレスや指輪は、この条文でいう金地金等には当たりません。 店頭で200万円を超える取引に別の案内が出ることはありますが、それは犯罪収益移転防止法など 別の法律によるもので、ここで引いた条文とは別の話です。

身分証を求められる1万円の線は、さらに別の法律(古物営業法)です。 こちらは 1万円未満なら、法律は本人確認を求めていないで条文を引いています。

何度も売っていると、譲渡所得ではなくなる

「金地金の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合には、その実態に応じて事業所得または雑所得となります。」

事業所得や雑所得になると、50万円円の特別控除も、 5年超で半分になる扱いも使えません。 家にあった品をまとめて手放すのと、売買を繰り返すのとでは、同じ「金を売る」でも別の扱いになります。

3つの数字の整理

金額何の線か根拠
30万円円1個または1組がこれを超えると、生活用動産の非課税から外れる所得税法施行令25条
50万円円もうけから引ける特別控除。売った額ではなく、その年の譲渡益の合計に対して1回所得税法33条4項
200万円円地金・金貨の売却で、業者が税務署に支払調書を出す線。課税の線ではない所得税法施行令350条の7

売る前に見ておくと分かりやすいのは、この順番です。 手元の品が生活に使っていたものか、1個または1組で30万円円を超えるか。 超えるなら、買った値段より高く売れたか。高く売れたなら、その差が50万円円を超えるか。200万円円は、 この判断のどこにも出てきません。

この記事について

法令の引用は e-Gov 法令検索の原文から、国税庁の引用はタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)から、 いずれも2026年10月4日に読んで転記しました。要約ではなく、書かれている文をそのまま引いています。 引用した文が出典から消えていないかは、当サイトの日次の点検で毎日取り直して照合しています。 金額をグラムに換算した箇所は、公表されている当日の参考価格から計算して表示しています。

当サイトは税の専門家ではありません。ここに書いたのは「条文と国税庁の説明に何と書いてあるか」であって、 個別の取引にどう当てはまるかの判断ではありません。 取得費を示す書類が無い場合の扱いや、相続した品の所有期間、確定申告が要るかどうかは、 事情によって変わります。実際の申告は、所轄の税務署か税理士にご確認ください。 法令も国税庁の記載も改正・更新されることがあります。

参考: 国税庁 No.3161 金地金の譲渡による所得、 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法、 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)

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